「動物病院を開業したいけど、何から始めたらいいのか知りたい」
「開業資金はどうやって準備したらいい?」このような疑問を持っている方もいるでしょう。
そこで本記事では、動物病院を開業するまでの流れや必要な届け出、そして動物病院に必要な資金や資金の調達方法などを詳しく解説します。
動物病院の開業にぜひ、本記事を参考にしてください。
動物病院を開業する流れは以下の通りです。
それでは、開業までの流れを確認していきましょう。
動物病院を成功させるためには、具体的な目標設定が重要です。まず、理想とする動物病院のコンセプトを明確にしましょう。例えば、どの位の売上や利益を目指すのか、また院長としての年収の目標など、具体的な数値を明確にしてください。
そして、どのような医療サービスを提供し、病院の規模はどのくらいを目指すのか、開業資金や予算はどのくらい必要なのかなど、事前に決める必要があります。
しかし、自分だけではコンセプトが決められない場合は、信頼できる人や専門家に相談することをおすすめします。
事業計画は、開業予定の場所や病院の規模、資金計画、利益見込みなどをまとめた文書です。なお事業計画書は、融資を申し込む際に役立ちます。
事業計画では融資の必要な金額や返済計画を明示し、具体的な目標を1年から10年以上の長期の範囲で具体的に設定します。
動物病院を開業する場所を選ぶ前に、そのエリアについてリサーチを行いましょう。リサーチでは、人口密度や人口動向、競合病院の存在、アクセス性などを含め、慎重に調べます。
病院の立地は経営において非常に重要なポイントです。どれだけ優れた獣医師がいたとしても、アクセスが難しい場所では集患が難しくなります。
エリアの調査と経営計画に基づき、動物病院の適切な物件を選ぶ段階に入ります。物件選びの際には、駐車場の有無や人通りなどをチェックしましょう。
また、契約書については契約を締結する前に細かく確認し、不備がないかを確認してください。さらに、開業後に動物の騒音などが近隣住民との問題を引き起こす可能性があるため、事前に近隣住民へ挨拶をすることをおすすめします。
物件契約が完了したら、内外装の改装や設備を整え、診療できる状態にします。
すぐに動物病院であることがわかるようなデザインや看板、清潔な待合室や診察室は、新規患者の獲得やリピート患者の維持に繋がります。何より、患者が気軽に訪れやすい環境を整えることが大切です。
動物病院の開業日が確定したら、広告と宣伝を行うためにチラシ、パンフレット、そしてWebサイトを制作しましょう。
現代では、多くの人々がインターネットを通じて情報を検索し、医療施設を選ぶ傾向があるためWebサイトに力を入れることは重要なポイントです。Webサイトや広告には診療時間、診療方針、料金、アクセス情報などを詳細に掲載することで、患者が利用しやすくなるでしょう。
受付や診察助手など、動物病院に必要なスタッフを募集し、面接して採用する人材を確保します。初対面の患者にとって最初に接するのは受付スタッフです。
獣医師の対応が丁寧であっても、他のスタッフの態度が悪い場合、病院に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、スタッフは慎重に選ぶことが大切です。また求人広告以外にも、知人からの紹介を活用する方法も視野に入れましょう。
動物病院の開業は、「新規開業」と「継承開業」があります。
継承開業とは、引退する獣医師から事業を引き継いで開業することを指します。新規開業では、立地や設備などを自分で選べますが、集患する手間がかかり収入が安定するまである程度の時間が必要です。
一方で継承開業は、多くの開業資金は必要ではなく、既存の患者がいるためある程度の収入が見込めるのがメリットといえるでしょう。ただし、前院長の患者との信頼関係を獲得して、経営を維持していくことの難しさもあります。
動物病院の開業に必要な書類は以下の3つです。
それぞれの届出について確認していきましょう。
動物病院を開業するには、獣医師免許証を持っている方が都道府県知事に対して「診療施設開設届」を10日以内の提出が必要です。仮に提出が遅れた場合は、遅延理由書を添付する必要があります。
なお、診療施設開設届には、「診療所の平面図」「獣医免許の写し」「法人の場合は約款の写し」が必要となるため、事前に用意しましょう。
動物を入院させたり預かったりする場合は、都道府県へ「動物取扱業届出書」を提出し許可を得る必要があります。手続きは、最寄りの保健所で行ってください。
動物病院でエックス線装置を取り扱う場合、「エックス線装置備付届」を提出する必要があります。設置届の書類にはエックス線装置の製作者名と型式、使用する台数や使用用途を記載して提出してください。
また放射線診療装置を導入する場合、高エネルギー放射線診療装置や放射線同位元素装置などの設置に関する申請書をそれぞれ提出する必要があります。
動物病院の開業に必要な資金は、規模にもよりますが賃貸テナントの場合、一般的に3,000万~4,500万円が必要とされています。自己資金は、開業資金の約2割あると安心です。
銀行からの融資を検討する場合、自己資金の10~20倍の融資を受けられます。しかし開業後の運転資金や設備投資を考えると、融資金額は自己資金の5倍までに抑えた方が良いでしょう。
関連記事:動物病院の開業資金は?資金調達の方法や必要書類を紹介
動物病院の資金調達には以下の4つの方法があります。
それぞれの、資金調達の方法について確認していきましょう。
日本政策金融公庫から開業資金として融資を受ける方法があります。担保価値の範囲内で、上限7,200万円まで融資が可能です。また、担保がなくても一定の条件を満たしている保証人がいる場合は、1,500万円まで融資を受けられます。
ただし、高額な担保がある方は少ないため、ほとんどの方は保証人を立てて融資を受けています。
銀行では、新しい事業の開業資金の融資を受けることが可能です。しかし、具体的なビジネスプランを提出し、必要に応じて保証人を指定したり担保を用意したりする必要があります。
なお、過去に金融トラブルがある場合では、融資が認められない可能性もあるため注意してください。
自治体による融資制度を活用して、開業資金を調達する方法もあります。しかし、厳しい条件を提示されるケースもあるため、内容を確認した上で申し込みをしましょう。
また、東京都では東京都中小企業制度融資『創業』という制度があります。事業所が都内にある中小企業が対象で、詳細な創業計画を立てている企業は上限3,500万円の融資を受けることが可能です。
資金調達で親戚や知人から資金の一部を借入れすることは一般的です。また、親類から贈与として資金を受けるケースも少なくありません。
ただし、親戚や知人からお金を借用する場合は、必ず借用書を作成してください。相手が親戚や友人でも借金なので、返済可能な範囲で借り入れをしましょう。
資金調達の際、以下の2つに注意してください。
それぞれの注意点について確認していきましょう。
必要な金額は、開業の場所や見込まれる患者数などに応じて変動します。そのため、具体的な事業計画を立て、必要な資金を算出することが重要です。
しかし、必要な金額を自分で計算しても、正しい金額を算出できるとは限りません。開業の準備をスムーズに進めるには、自分だけでなくコンサルタントの支援を受けることも大切です。
資金調達の際、思っていたよりも多くの融資が可能だと通知された場合、「念のため多めに借りておこう」と考える人もいるでしょう。確かに利息が発生しない場合には、多めに借り入れておくのも1つの選択肢です。
ただし利息が発生する場合、過度に多く借り入れることで総返済額が急増し、毎月の返済が困難になる恐れがあります。そのため必要な資金額を計算し、その範囲内で調達しましょう。
今回は、動物病院を開業するまでの流れや必要な届出、そして必要な資金の調達方法などを詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
動物病院の開業には、事前の調査と詳細な計画が重要なポイントです。そしてどこまで具体的かつ慎重に進めることができるかが成功を収める鍵となります。
また、開業後も地域住民に信頼され、必要とされる動物病院となるためにも準備を惜しまないことが大切です。