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 動物病院が実践したい効果的な節税対策とやってはいけない注意点 

公開日 2023.10.27 更新日 2023.10.30

動物病院が実践したい効果的な節税対策とやってはいけない注意点

動物病院を開業した後は節税についても考えていく必要があります。ですが「そもそも動物病院でどのような節税対策ができるのかわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで、節税に取り組みたいと考えている方のため、動物病院でも実践できる効果的な方法とやってはいけないことを紹介します。

 

この記事を読むことによって、具体的にどういった方法で節税ができるのか、なにに注意すべきかがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも「節税対策」とは?

節税対策とは何かというと、正しい方法によって税金を抑えることをいいます。基本的に動物病院の売り上げが増えていけばそれだけ所得税や住民税といった税額が高くなってしまうのは防げません。
ですが、控除を受けたり、経費を正しく計上したりすることによって税金を抑えることが可能です。

 

なお、節税と脱税は異なるので混同しないようにしましょう。節税は法律によって認められた正しい方法で税金を抑えるのに対し、脱税は犯罪行為です。不当な形で税金の支払いを逃れる行為であるため、行ってはいけません。
節税対策について正しく理解しておかないと自分で意図せずに脱税を行ってしまう可能性もあるため、注意しましょう。

動物病院ができる節税対策

動物病院でもさまざまな節税対策が可能です。効果的な方法を紹介します。

青色申告する

青色申告を選択することにより、大きな節税効果が期待できます。節税の基本ともいえる対策です。

 

申告には青色と白色の2種類があります。青色申告は複式簿記による記帳の手間がある一方で65万円の控除ができるのが特徴です。一方、白色は年間収入によっては帳簿をつける必要がない代わりに申告が簡単に行える方法として選ばれていました。
白色の場合控除額は10万円のみです。

 

ですが、現在は白色でも帳簿をつけることが必須となりました。会計ソフトなどを利用することによりそれほど専門的な知識がなくても青色申告は可能なので、控除額の大きい青色申告を選択しましょう。なお、青色申告を選択する場合は事前に申請が必要です。

事業に関わるものを経費に計上する

所得税や住民税は売上から経費を引いて残った金額である「所得」に基づいて計算されるものです。そのため、売り上げが大きくても経費がかかっていれば、それほど税金は高くなりません。

 

節税のためには経費をしっかり計上することが重要です。何が経費扱いになるのかよく理解し、経費計上を忘れないようにしましょう。
例えば、集客のためにかかった広告代や福利厚生のための費用なども対象です。

税金を必要経費に計上する

必要経費として認められる税金があります。例えば、固定資産税や印紙税などです。
また、訪問診療を行っている場合は自動車税も経費にできます。この場合、事業に使用している割合に応じた金額しか計上できないので注意しましょう。
なお、所得税や住民税などは個人に対してかかる税金であることから、経費にはなりません。

来期の前払費用を必要経費に計上する

前払いできる医療機器のリース料などをまとめて支払ってしまうのも一つの方法です。ただし、当期の経費に算入するためには翌年以降も同様の経費処理をしなければならないので注意しましょう。

 

「今年は経費が少なかったから前払費用を必要経費に計上したいけれど、来期以降は別の方法にしよう」と考えることはできません。

少額減価償却資産の特例を利用する

通常、10万円以上の単価となる固定資産は減価償却が必要ですが、青色申告の場合は30万円未満の固定資産であれば少額減価償却資産の特例によって一度に計上が可能です。
利益が多い年などは少額減価償却資産の特例を活用することによって経費に計上できる金額を増やすこともできます。

動物病院の一角に住居を設ける

新規開業する際、自宅と兼用の動物病院にすることによって節税が可能です。動物病院として使用している割合分の家賃や水上光熱費などを経費に計上できるようになります。

 

関連記事:動物病院の開業場所はどう選ぶ?診療圏調査の重要性を解説

法人化する

事業の規模が大きい場合は、法人化も視野に入れましょう。法人化することによって、利益によっては所得税の税率を大幅に下げることができます。
また、融資の選択肢が広がるのも特徴です。一般的には個人事業主よりも法人化した方が資金繰りしやすくなります。

 

また、動物病院を法人化しておくことによって相続税や贈与税といったものを回避することが可能です。将来的に子どもに動物病院を引き継いでもらいたいと考えているのであれば、法人化も選択肢の一つといえるでしょう。
経費として認められるものが増えるほか、役員報酬も設定できます。

 

ただし、社会保険への加入が必須となるため、従業員を雇うことによって発生する費用についても考えておかなければなりません。

 

他にも会計処理や手続きが複雑になるといったデメリットもあるので、自院の場合は法人化が向いているのかよく検討が必要です。

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済は、事業主が退職金を積み立てる目的で作られた制度です。15年以上払い込んでいれば65歳以上になって事業をたたんだ際に一定額が受け取れます。
月々の掛け金は1,000円~70,000円なので、無理なく始められるでしょう。掛け金は全額控除となります。

経営セーフティ共済に加入する

5,000円~20万円までの掛け金が設定でき、税額控除となる制度です。倒産防止共済のことで、取引先が倒産した場合、無担保・無保証人・無利息にて借入ができます。

生命保険料控除を活用する

生命保険や個人年金保険を支払っている場合、支払った生命保険料に応じて一定金額が所得から差し引かれるのが生命保険料控除です。
所得を抑えられるので、所得税、住民税の負担が軽くなります。

動物病院の節税対策でやってはいけないこと

税金を抑えるためといっても、やってはいけないことがいくつかあります。代表的なのは以下の3つです。

今年分の節税に限定してしまう

効果的な節税対策だったとしても、それが今年分限りのものとなると効果的な節税とはいえません。動物病院を運営していく以上、この先も節税の必要が出てきます。
そのため、今年分だけを何とかすれば良いと考えるのではなく、将来的にみても節税に繋がるような対策を取っていきましょう。

脱税と節税を区別していない

脱税と節税を同じものと考えないようにしましょう。確かに脱税によって税金を抑えることはできますが、犯罪行為となり、処罰の対象です。具体的な脱税としては、事実以上に経費や人件費を計上したり、本来よりも売り上げを少なく申告したりすることなどが挙げられます。

 

仮に節税ではなく脱税を行ってしまった場合、刑事罰の対象です。罰金や懲役のリスクがあります。脱税が疑われた場合には税務調査が行われるほか、その結果脱税が発覚した場合には追徴課税を支払わなければなりません。

 

それだけではなく、動物病院で脱税が発覚してしまえば顧客の信頼を失うことにもなるでしょう。結果として動物病院の経営を継続できなくなってしまう可能性もある非常にリスクの大きい行為です。必ず正しい方法で節税に取り組んで見てください。

ライフプランに沿った形や目的のないまま節税を考えている

実際に節税を始める前にライフプランや目的から節税手段を検討しないと失敗しやすくなります。
節税を考える際には、先に人生計画であるライフプランから考えることが重要です。自分のライフプランに良くない影響を与えるような節税対策は避けた方が良いでしょう。

 

それから、どのような目的で節税に取り組むのかよく検討しておくと、どういった節税対策が自身に向いているかが見えてきます。節税対策には多くの手段があるため、節税によって実現したいこと、目的としていることを考えることから始めると良いでしょう。

節税を意識するだけでも変わる

いかがだったでしょうか。動物病院で実践したい効果的な節税を紹介しました。具体的な方法や注意点がご理解いただけたかと思います。
節税を全く意識しない場合、税金の額が大きくなってしまうのは避けられません。普段から節税を意識し、できる対策について検討しておくことが重要です。可能であれば新規開業する段階から節税を意識すると良いでしょう。

 

動物病院新規開業支援の有限会社ランタック