動物病院はさまざまな経営課題を抱えています。そのため、これから動物病院の新規開業を検討しているのであれば、具体的にどういった課題があり、どのように対策をとれば良いのか理解しておくことが重要です。
ここでは動物病院の新規開業を予定している方のため、押さえておきたい動物病院の課題と解決に結びつく施策を紹介します。この記事を読むことによって困ったことが起こった際にどのように対応していけば良いのかがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。
動物病院を経営していく際、さまざまな課題に直面することとなります。ここでは、代表的な課題について解説します。
安定して経営を継続していくためには、集客が欠かせません。ですが、具体的にどのようにすれば集客力がアップするのかわからず、苦戦している方が多いようです。
集客の方法は幅広く、テレビCMのほか、チラシやネット広告、SNSなどが挙げられます。ここで注意しなければならないのが「獣医療広告ガイドライン」です。
獣医療広告ガイドラインとは獣医療に関する広告の制限及びその適正化のための監視指導に関する指針のことで、動物の命の尊厳を守るためのルールが定められています。獣医療広告ガイドラインに沿った形で宣伝を行わなければならず、苦戦してしまう方がいるようです。
仮に違反してしまった場合には免許取り消しの可能性も出てくるので、十分注意が必要になります。
農林水産省が発表している「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」を確認してみると、令和4年12月31日時点で産業動物、その他小動物を扱っている動物病院の開設届出数は12,616件です。
就業獣医師数別の施設の状況を確認してみると、獣医師を1人起用している動物病院は10,737件でした。一方、2人起用できている動物病院の数はというと、2,942件と急激に数が減っています。
このことから、多くの動物病院では獣医師が1人しかいない状況が見て取れるでしょう。動物病院の数は増えていますが人材確保の難しさに頭を抱えているケースが多いです。人材が少なければ育成にも時間を割くことができません。
参考:(PDF)農林水産省:都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況[PDF]
動物病院を開業する際には医療機器を購入しなければなりませんが、購入費用も大きな課題の一つです。家族の一員としてペットを大切にしている方が多いため、動物病院に求められる設備の機能性は高いといえます。
高機能の設備を導入するとなれば、それだけ費用もかかります。
ですが、特に新規開業の場合、どの程度の売り上げが期待できるか明確にはわからないため、高額な医療機器用を充実させるのは非常に難しいことといえるでしょう。
かといって性能の悪い医療機器で妥協してしまえばライバルの動物病院と差がついてしまい、経営悪化に繋がる可能性もあります。
一般社団法人ペットフード協会の令和4年全国犬猫飼育実態調査によると、犬の飼育頭数は2013年に8,714千頭だったものが 2022年には7,053千頭になりました。世帯飼育率も12.85%だったものが9.69%まで減っています。
このことから、市場は徐々に縮小しており、今後もその傾向が続くと予想できるでしょう。将来的に新規顧客の獲得が今以上に難しくなる可能性が考えられます。
市場の縮小は動物病院にとって大きな課題の一つです。
参考:(PDF)一般社団法人ペットフード協会:令和4年 全国犬猫飼育実態調査 主要指標サマリー[PDF]
動物病院が抱えている課題について紹介しました。続いて、課題の解決にはどういった施策が効果的なのか見ていきます。
動物病院の数は増えている一方で市場が縮小しているため、地域での競争は非常に激しいものとなっています。そこで重要になるのが、ライバルといえる他の動物病院との差別化です。
自院ならではの魅力をしっかりアピールし、多くの方に選んでもらえる動物病院を目指しましょう。
例えば、アクセスしやすいところにある動物病院はとても魅力的といえます。実際に病院を構えてからだと簡単に立地の変更はできません。
新規に動物病院の開業を検討している方は、通いやすさを重視して物件選びをすると良いでしょう。アクセスに問題がある動物病院との差別化にもなります。
重要なのは、顧客満足度を高めることです。顧客にとって選ばれる動物病院は満足度が高いです。
例えば、治療サービスの質を重視している顧客であれば、獣医師の実力や、そろえている機械の質の高さなどが顧客満足度と関係してきます。
動物病院の感じの良さを重視している顧客であれば、医師やスタッフの接客力を重視しているでしょう。
まずは自院で強みとできるところを探し出し、それをわかりやすく伝えていくことが重要です。どこにでもあるような特に強みのない動物病院は、今の時代、なかなか生き残れません。差別化に力を入れましょう。
これからの動物病院が力を入れていきたいものとして、DX化が挙げられます。DXとはデジタルトランスフォーメーションのことです。デジタル技術を活用することにより、自社の競争力を高めることを指しています。
より良いサービスを提供できるようにDX化に取り組んでいきましょう。例えば、オンライン予約サービスを活用できるようにすれば、電話予約が減るのでスタッフの労力が抑えられるほか、電話が苦手な新規顧客の獲得にもつながります。
それから、電子カルテを導入すればカルテ管理の手間がかからないので、こちらもスタッフの労力を抑えることに繋がるでしょう。オンライン診療ができるシステムを構築すれば、他の動物病院との差別化にもつながります。
集客力の強化として活用したいのが、広告やSNSの運用です。広告は、特にまだ知名度が低い動物病院にとって効果的といえます。ただし、軽く触れたように獣医療広告ガイドラインが決められているので、これに沿った形で広告を出稿しなければなりません。
それから、SNSも動物病院の知名度向上のためにぜひとも活用すると良いでしょう。FacebookやTwitter、Instagramを使って動物病院の情報を収集している方は多く、そういった新規顧客の目に留まりやすくなります。
動物病院の雰囲気を知るためにSNSをチェックしている方もいます。
関連記事:動物病院にはインスタグラムの運用がおすすめ!活用ポイント5選
自動精算機を導入することによって会計業務が簡単になります。会計ミスの可能性もありません。
また、来院者としても会見待ち時間の短縮が期待できるので、メリットといえるでしょう。導入費用はかかりますが、将来的にみてメリットの方が大きくなるケースが多いです。
駐車場が少なかったり、なかったりする動物病院は、駐車サービス券の発行を検討すると良いでしょう。動物病院の費用がかかるほか、駐車場代もかかるとなると、駐車場が無料の動物病院の方が選ばれやすくなってしまいます。
駐車券を動物病院に持っていけば駐車料金が無料になったり、割引されたりするサービスを導入するのがおすすめです。
特に、周辺にこういったサービスを提供している動物病院がない場合「駐車料金がかからないからあそこの動物病院を選ぼう」と考えてもらえる可能性もあります。
動物病院としての知名度を上げていくために活用できるのが、看板や広告です。看板を設置することにより、動物病院があることを理解してもらえるようになります。また、わかりにくい場所にある場合は目印にもなります。
どれだけ良いサービスを提供していたとしても、存在を知ってもらえなければ選んでもらえません。
注意点として、看板にはどのような内容でも記載できるわけではなく、広告と同様に獣医療広告ガイドラインに沿った形で運用していかなければなりません。施策を実施する際には十分に配慮しましょう。
いかがだったでしょうか。動物病院が抱えやすい経営課題について紹介しました。どういったことが課題になるのか、どのように対応すべきかご理解いただけたかと思います。
動物病院によって抱える課題は異なるので、経営がうまくいかない場合は課題を洗い出し、それに対して効果的な施策を実施することが重要です。
ただ、場合によっては実施すべき施策を明確にできないようなケースもあるでしょう。