獣医師をしていると、いつかは動物病院を開業したいと考えている人は多いのではないでしょうか。しかし動物病院を開業しても、集患できず失敗してしまうケースは少なくありません。
動物病院を開業で失敗しないためには、事前に失敗する原因を理解しつつ成功させるポイントを抑えることです。
そこで本記事では、動物病院の開業で失敗する原因、そして成功させるためのポイントについて紹介します。ぜひ、動物病院運営の参考にしてください。
近年、動物病院や個人事業主の廃業率は、1年で27%、3年後では62%、さらに10年経つと88%もの人が廃業となっているのが現実です。
なぜ、こんなにも廃業率が高くなっているのでしょうか?次の項目では、動物病院の開業で失敗する原因について解説します。
動物病院の開業で失敗する主な原因について4つ紹介します。
それでは、それぞれの原因について確認していきましょう。
アクセスの悪さは、集患ができない原因のひとつとなります。経費を節約しようとして、立地条件の良くない場所を選んでしまうと、患者が来院しにくい環境になる可能性もあります。
そのため、動物病院を開院するなら、駅や大通りに近い場所や駐車場が近くにある場所など、集患がしやすい立地条件を考えることが重要なポイントです。
関連記事:動物病院の開業場所はどう選ぶ?診療圏調査の重要性を解説
高額な医療器具を入れすぎてしまい、資金が足りなくなってしまうケースもあります。高額な医療器具は、はじめに揃えるのではなく、徐々に設備投資をしていくことをおすすめします。
なお、入院ゲージなどは新品ではなくリサイクル品を活用すると良いでしょう。取引のある医療機器メーカーの営業担当へ相談してみると、安価で譲ってくれる場合もあるため相談してみるのも良いかもしれません。あらかじめ上限となる予算を決めておき、予算が上回らないよう気を付けることも大切です。
医療器具だけでなく、初月2ヶ月は赤字になる前提でランニングコストもあわせて資金を用意しておきましょう。
動物病院を開業しても、スタッフが集まらない場合があります。スタッフが不足してしまうと、十分な対応ができなくなってしまうケースも少なくありません。
なお、2022年5月に愛玩動物看護士法によって施工された「動物看護士」が国家資格となりました。これにより、愛玩動物看護士でないと獣医師による診察の補助が出来なくなるため、有資格者を雇用してスタッフの安定化を図る必要があります。
十分な集客対策を行わなかった場合、経営が失敗となるケースがあります。
動物病院を開業するには、Webサイト、新聞への広告、ポスティングなど、さまざまな方法を用いて集客することが大切です。
動物病院を開業する際には、Webサイトの作成は必須です。Webサイトを持たないと、飼い主たちに必要な情報を提供する手段が限られてしまいます。
開業日に間に合わせることは当然ですが、開業の約2週間前から「オープン予定」といった情報を掲載し、Google広告などで宣伝することが望ましいです。
ただし、単にWebサイトを作成するのではなく、飼い主たちが病院に訪れたいと感じるような情報を充実させることが重要です。
開業時には新聞への広告やポスティングなど、アナログな広告施策も取り入れることが大切です。アナログ施策の反応率は通常1%前後であることが一般的ですが、それでも「見込み客」を作っておくことは重要なポイント。
一方で、Web関連の広告施策は主に「動物病院を探している人」を対象としていますが、アナログ施策は「まだ検討段階にない人」をターゲットにしています。したがって、ターゲット層の違いからも、アナログな広告施策を採用することが必要だといえるでしょう。
開業を成功させるには、以下の4つのポイントを抑えてください。
それでは、成功させるポイントについて確認していきましょう。
成功させるポイントのひとつ目は、リサーチを入念に行うことです。
動物病院の場所を検討する場合には、競合の存在や集客が見込めるのかなど、詳細な情報調査が必要不可欠です。情報収集を怠らず、リスクを最小限に抑えるために徹底的に調査を行いましょう。
日本政策金融公庫では、創業やスタートアップを支援するため融資限度額3,000万円まで無担保、無保証人の「新創業融資制度」が利用可能です。
ただし、必要な書類をすべて揃えて提出し、審査や面談を受けなければいけないため、しっかりと対策する場合は、専門家へ相談すると良いでしょう。
事業計画を慎重に立てることも、動物病院を成功させるポイントです。どうしても、事業計画書を作る際、ポジティブで攻めている内容になりがちです。
しかし、現実は予期せぬ失敗や確実に収入に繋がるわけではありません。
事業計画書はポジティブな内容だけでなく、むしろ慎重に事業計画を立てることをおすすめします。そして、「事業計画よりも上回る結果となれば良い」という考え方が良いでしょう。
雇われていた頃は、疑問点があれば同じ病院内で相談ができました。しかし開業すると、誰に相談したら良いのか悩んでしまいます。
動物病院を開業する際、気軽に相談できる相手がいると安心です。そのため何かあった時、相談できる専門家を探しておきましょう。
次の項目では、誰に相談すれば良い相手かについて解説します。
そこで、おすすめの相談できる相手は以下の4つです。
それでは、相談できる相手について見ていきましょう。
動物病院の経営者は、豊富な専門知識と実務経験があります。
経営戦略や設備投資、スタッフの管理や顧客サービスの向上など、開院後に直面する可能性がある問題について、経験者ならではのアドバイスをしてもらえるでしょう。
そのため、開業の疑問点や不明点などは、信頼できる動物病院の経営者へ相談することをおすすめします。
税理士は主に税金に関するアドバイスを提供する専門家ですが、中には企業の資金管理にも詳しい税理士もいます。例えば、適切なキャッシュフロー管理方法、適切な給与水準の設定、経費の最適化に関する相談できるケースもあるでしょう。
税金面だけでなく、会社の資金に関する質問であれば相談できる弁護士もいることを認識しておいてください。
社会保険労務士とは、社会保険や労働関連などの労務管理をする人を指します。
保険の手続きや届出、給与計算などさまざまな事務処理が必要となります。また、労働や社会保険関連の法律は頻繁に改正されます。相談できる社会保険労務士がいることで、法令改正に関する情報や、労務管理全般に関する情報が入手しやすく、動物病院に合わせた適切なアドバイスや指導が受けられるでしょう。
コンサルタントでは、動物病院を開業する方に対して、経営方針やマーケティング施策の実施など、多岐にわたるアドバイスを提供しています。そのため、質問や疑問点があれば、さまざまな観点から適切な回答を得ることができるでしょう。
なお、経営に関してトータルサポートを希望する場合は、コンサルタントの利用を検討することをおすすめします。
今回は、動物病院の開業で失敗する原因、そして成功させるためのポイントについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
動物病院の立地選定やスタッフが不足していると、収益を上げにくく、最終的に廃業へのリスクが高まります。特に日本のようなペット愛好者の多い国では、競合に対抗する必要があります。
安定的な経営を確保するために、成功させるポイントを抑えたり、開業前にコンサルタントや専門家に相談をしたりするなどして、動物病院の成功を実現させましょう。